さて、儀式の後は食事である。
先ほど犠牲になった豚君を、村の人たちは見事な手さばきで裂いていく。使うのは竹製のナイフだ。葉っぱを敷いた上に、先ほどの弓矢で息絶えた豚君を横にし、腹の方からナイフを当てて内臓を取り出す。竹のナイフだが、これがまた良く切れる。見てると普通の金属ナイフと変わらない切れ味だ。
頭を切り離し、腸も取りだし終えて、白い脂身の下に街のスーパーで見慣れたちょっとピンクがかった豚肉の色が見えてきた。 あーあ、さっきまで元気に走り回っていたのに、人生なんてはかないもんだ。と、へんなところで感傷に浸る。でも、ナイフを振るう少年の目は嬉しそうで、もう頭は目の前のごちそうを食べることしかないようだ。でもなー、今まで一緒にひとつ屋根の下で暮らしてきた仲なんだろーに。
おそらくいつもはこんな手のこんだやり方はしないとおもうが、今日は儀式ということで特別料理、村の女の人たち総出での料理だ。
薪を四角く組んでその真ん中にちょっと大きめの石を置いておき、燃え尽きた頃に石を拾い出す。熱くなった石を先の割れた棒でうまくつまんで、男も女も石を運ぶ。運ぶ先は、あらかじめ作っておいた草を積んだ場所だ。
草をまず地面に敷いて、さらにその上に彼らの主食であるサツマイモの茎と草の部分を載せる。中央部に窪みを作っておいて、ここに熱くなった石を入れ、この熱で料理するのである。石の回りにはサツマイモも置いて、ここでいったんサツマイモの葉っぱで薄いふたをする。この上にさっきの豚君の肉を載せて、もう一度、草で厚く覆う。超巨大なビッグマックのポーク版とでもいおうか。
最後は、
覆った草の上にちょっと大きな平たい石を重しに置いて、草が崩れないように回りを紐で縛って、3分間、ではないが、しばらく待つのだ。
写真の女の人たちはみんな頭から編み袋をつるしているが、これはどうもファッションの様であり、皆んなちょっとづつ、模様や色が違ってたりする。気のせいか若い女の人はど赤っぽい明るめの色づかいで、年配の人は地味目の色をしていた。(これは単に気のせいかもしれません)
焼きあがった豚君である。
草の水分から出る湯気に包まれて、ほのかに肉の焼けるにおいが食欲をそそる。ちょうどまわりに入れたサツマイモの茎も柔かくなって食べごろだ。ちっちゃな子供たちは、もうつまみ食いをしている。
この後、村人たちは仲良く豚君を竹のナイフで切り分けて、塩コショウなんかもちろん無しに、でもほんとうまそうに、食べたのである。もちろん、スポンサーである僕にもぜひ食べろと強力なお誘いがきたが、この先もまだ旅を続けたかったので、丁重に断った。(この項、おわり)